プレリュード

 

いつまでも終わらない愛を...

 

タバコが甘いようにそれは甘い。加えて、リボンがほどけるようななめらかさ。

煙る湖面を遠ざかるふやけたパンに小さい鳥が降りてきてついばむのを見て、痺れるような羨望の情を覚えた。少しも醒めてはいけないような、そんな気も...

 

日頃何気なく行っているあらゆる所作が、うたた寝の間に見る不完全な夢のそばで、何かに向かって行進を始めている...のが、どうして分かるんだろう?どうして見えないものが、隠されたものが、隠されているように見せてその実はじめからありもしないものが、思わずひるんでしまうほどの質量を伴って私の意識に現れるのだろう?

私は私から逃れゆくものの総体だったんだ...。私はリビングを散歩して、昨日買ったハンガーを拾得した。ハンガーには洋服をひっかけておくこと。

 

一番大きい国語辞典しか要らない。でも、国語辞典が萎んでいってしまうんだ、前はあんなに大きかったのに...

 

何かを失くした気がして、未明に外をさまよっていたら、新聞屋の明かりで私はかき消されてしまったんだ...

 

アスファルトに轍を刻もうと懸命に牙を立てる自動車の、情けないエンジン音が通り過ぎて、セブンイレブンが見えた。そういえば私は敗北の歴史だった。私は駐車場に駐まって、この列島にまだ一本たりとも道路がなかった時代のことを必死に思い出そうとする。でも、どれだけ記憶を遡ってもそこに道路はあって、どこまでも遠い昔からそれは続いている。そしてそれは、私の足下で終わっている。いや、そうじゃない...次の瞬間、道が、私を踏み潰して、私は、どうにも...